第一章 雪みたいに花みたいに

4/26
前へ
/518ページ
次へ
「今日は客がいなかったから、売れ残ってしまったよ」   喫茶店ひまわりは、名前は喫茶店であったが、定食を多く売っていた。 今日は、台風のせいで夕食分が余った状態であった。 売上利益に応じての歩合制であるので、売れ残るのは痛い。  李下が風呂敷を広げると、幾つもの鍋が積まれていた。 俺は、鍋と李下を見比べてしまう。  志摩の箪笥だけでも相当重いのに、これだけの鍋を、よく担いできたものだ。 箪笥を降ろす所を見ていなかったが、箪笥の上に鍋を重ねて運んでいたらしい。 箪笥に少し鍋の跡が残っていた。 「かなり余ってしまいましたね」 「そうでしょ。でも、皆で夕食にしようか」  俺は、上月 守人(こうづき もりと)、薬剤師を目指している大学生であった。 だが、皆と少し違う面があり、特殊な能力を持ってしまっていた。 でも、それは珍しい事ではない。
/518ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加