第一章 雪みたいに花みたいに

5/26
前へ
/518ページ
次へ
 箪笥から手だけ伸ばしているのは、志摩(しま)、俺の幼馴染で、今は恋人でもあった。 志摩は、無形の生き物であり、俺の出身地である壱樹村(いつきむら)では、 ×(ばつ)とも神とも呼ばれる存在であった。  志摩は、手を伸ばすと皿を持ってきて、総菜を盛り付けていた。 志摩は手しか出ていないが、ちゃんと見えていて、惣菜を綺麗に盛り付け、 更にテーブルに並べている。 「李下さん、食事にしましょう」  元風呂屋のここは受付部分で、残っていた備品をそのまま使用していた。 李下は、待合に使用していた椅子に座り、食事を始めていた。
/518ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加