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「最初はね、ドアノブにこれを掛けておくんです」
ひとしきり、お互いのペット自慢などで談笑した後、彼は言った。
喫茶店の奥まった席のテーブルの上、手のひらほどの大きさのそれは、赤い目がビーズで縫い付けられた、ウサギのぬいぐるみのキーホルダーだった。
「どこにでもありそうなやつでしょ?
それが良いんです、っていうか、それで良いんです。誰でも気軽に手に入れられる物じゃないと、密告なんてできないですから」
取材に応じてくれた彼は、自称『積極的動物愛護団体』の一員だという。
「奴らはね、どういう訳かハッカーやいわゆる闇の権力者の中にも熱狂的な動物好きやペット愛好家がいるって事にまで、頭が廻らないんですよ。
だから平気で裏サイトに動物虐待動画なんか載せて自慢するわけです。
自慢っていうのも彼らの勘違いなんですけどね。
あいつら、こんな残酷な事できる自分って凄いと思ってるかもしれないけど、普通に肉喰ってる人間は、毎日どっかでそれやってる人間のおかげで肉が喰えてるわけですから。
本当の闇の中で生きてる人間からしたら、ああ、元々そっちの世界から足洗って、実際今そういう職業で真面目に生きてる人間もいますよ。食肉の解体とかね。それは本当に逆に尊敬に値する、精神的な強さと使命感がなきゃできない仕事ですよ、本当に。
だからどうかと思いますよね、最近の肉ブームも。命の重みゼロですもんね、美味い肉リポートとか。
で、人間のそういう汚い面とか散々見てきて、実際そういう仕事とか請け負ってきた側からすると、ペットって本当に癒しなんですよ。
あんだけ嘘つかない、こっちの外見とか職業で差別しないで愛してくれる存在って、人間じゃまず無理ですよね。
だからほら、やばい噂のあるどっかの国の大統領とかもすごくいっぱい犬飼ってたりするでしょ。
けっこうね、本気で人間は殺せても動物は無理、っていう裏の人、多いんです」
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