ラビットさん

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「で、それでもダメなら、この、『ラビットさん』に行ってもらいます。  ピンポーンて、出たらサプラーイズ! みたいなウサギさんがね、玄関にいるんですよ。  それで、動物虐待者を捕まえてもらいます。    あとは、自分が動物たちに対してやったことを、身をもって学んでもらうわけです。  数が多ければ、その数だけ。  医療機関とかもありますからね、モグリの。  そこで治しつつ、しっかり反省するまで体に刻み込んでもらいます。  それが済んだら、今度は彼に『ラビットさん』になってもらいます。  たまに彼じゃなくて彼女もいるけどね。男が多いですよね、やっぱり。  だってこいつらほっといたらそのうち子供とか女性に手ぇ出しますもんね。  あいつら「害獣を殺しただけ」なんて言い訳しますけど、こっちからしたらあいつらの方がよっぽど社会悪ですもんね。害獣・害虫以下ですよ。  だから社会的にも、こいつらの家族的にも、いなくなっても騒がれませんよ。大概。  それどころか、「これこれこういう訳で一時的に矯正施設に入っていただきます」って手紙でも送っておけば、家族にも納得されちゃうことが多いんです。一生ね。恥ですから。  で、『ラビットさん』になった彼か彼女かが、次の動物虐待者を捕獲したら、任務完了です。  やっと殺してもらえるわけです。  良かったですね。動物たちの気持ちが解りますよね。どれだけ辛い思いをしたか、痛かったか、怖かったか。  はい、そういうわけで、これが都市伝説『ラビットさん』の実態です。  お姉さんにも一個あげますよ。  もし近所にそういう奴いたら、ドアの前に下げといて下さい」  そう言って彼は写真を胸にしまい、席を立った。  隣に座っていた『ラビットさん』は軽く蹴られるとよろよろと立ちあがり、彼の後について喫茶店を出て行った。  テーブルの上には、赤いビーズの目をしたウサギのキーホルダーだけが、ポツンと残されていた。
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