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付き合って以来、彼女は僕の血を吸うことを「食事」としている。
また、彼女がサキュバスだということは学校では誰も知らない。
なぜかと言えば簡単な話で、クラスにはエルフもドワーフも当たり前にいるのだが、サキュバスは彼らと違い保護されていない。
つまり憲法に則り彼女は15歳の誕生日と共に隔離されてしまうのだ。
彼女の、僕の大事な彼女の誕生日は8/31。夏休み最後の日でもある。
そして今日は8/30。
僕と人外の彼女の、共にいられる最後の夏が終わろうとしていた。
*
「もーっ! なんで部長はあんなに頑固かなぁ?!」
「まあまあ。部長は部長で大変なんだよ。文化祭委員から目ェ付けられてるし」
「でもさー……」
駅までの道のり、僕と公佳はだべりながら歩いていた。
あえて口には出さない。
出さないが分かっている。
この道を公佳が通ることはもうない。
絶対に、もう無いのだ。
「ねぇ、秋夜! 明日さ、デートしない? 神社でお祭りがあるからさ」
彼女とは周りに人がいないときは名前で呼び合うのだ。
「ん? デート? いいけど……それは……その……」
「……ごめんね? 辛い思いさせて。そう。君との最後の思い出を作りたいの」
言わせてしまった。
我ながら最低だと思う。
「……ごめん」
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