軽井沢にて

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軽井沢にて

 その日も結局イクことはなかった。ワタシの住んでいた汐吹村では絶頂に達した女は幸せになるってゆー伝説が残っている。  信彦は軽井沢に別荘を持っていた。  次の日は日曜だったので夜の高速をドライブして軽井沢に向かった。  ロフトに大砲みたいな望遠鏡が格納されている。ドームはモーターによって回転するようになっている。  シャッターが自動的に開く。  こと座、わし座、はくちょう座などがひしめき合っている。  冷暖房は完備していない。 「望遠鏡は暑いのとか寒いのとかキライなんだ?」  ハーゲンダッツとアイスノンを持って潜り込んだ。  水冷装置は洗濯機のポンプを利用している。この辺りは原野商法にはうってつけだな? 「この辺は将来開発が進むでしょうね?」  信彦のペニスを弄りながら言った。 「そうなの?」 「パパが観光部で働いているの」  あのジーさんは確かに観光部で働いていたな?毎年の固定資産税に苦しんでいた。 『息子に相続されたら迷惑がかかるだろ?』萎びたペニスを口に含みながら聞いていた。  その頃は不動産会社に勤めていた。  正座不動産ってゆー馬場通りにある会社だ。 『可愛い息子さんのために力になってあげたいわ?』  特殊メイクで高齢の女に化けていた。 『小林さんのおもちの土地の売却利益だけでは利幅が少なくて買い取りが出来ないの?奥日光にある土地を購入してくれたら、買い取ってあげてもいいわよ?』  小林が国民生活センターに問い合わせるリスクを考えて馬場通りのアジトはすぐに引き払った。  小林はまんまと引っ掛かってくれた。 今頃は農業に勤しんでることだろう。アソコはまったく土地の開拓がされていない。  この夜、信彦は2回も射精した。  1回は口のなか、もう1回は掌に注いだ。  翌日は旧軽井沢を散策した。《デートまであと4日》  旧三笠ホテルは『軽井沢の鹿鳴館』と呼ばれ、政財界人の社交場の舞台になったところだ。  聖パウロカトリック教会もナカナカ素敵だった。  木の温もりの溢れる三角屋根が特徴的だった。チェコ出身のアントニン・レーモンドによって建設されたものだ。  椅子や梁には丸太が使われている。 「マルタの鷹って知ってるかい?」  信彦が尋ねてきた。 「レイモンド・チャンドラーだったっけ?」  前にいる中年の女の足は丸太みたくぶっとかった。醜い女ね?  
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