バーでの決闘

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バーでの決闘

 アパートに戻りモニターを見た。  『ロウサイ』と客の男が言った。  このバーの店員なのだろうか?  広東語で老細はマスターって意味だ。 『ヤオ シャオシン ア?』  マスターが油紙に包まれた何かを渡した。  気をつけてな?って意味だ。  黒電話がジリジリリンと鳴った。 『ワイ?』  広東語でもしもし?だ。  Why(何故)に響きが似ている。  ドアが開いてアメリカ人が入ってくる。 『Whyn’t you get out of here!』(とっとと失せろ!)  リボルバー拳銃の撃鉄をジャキリと上げた。 「ジャウ!」  香港の人間と思われる男が「逃げろ!」と叫んだ。  ダンッ!銃声が響き渡る。 「はい、カットー!」  カチンコが鳴った。  何だよ?映画のロケだったのか?    ベランダに出てタバコを吸った。  トンボみたいな形の小型ヘリが飛んでいる。アエロコプターって奴だ。  あれもロケに使われてる奴なのかな?  スペードが社会保険が未納であることが分かった。  対戦車ロケットで潰してやろうか?    東京は本当にイヤなところだった。  田舎モンが!そーゆー冷たい視線を向けられた。大学時代、戦国ゼミってのに在籍していたが富山って真瀬教授のお気に入りがワタシを標的にした。  取り巻きの瀬黒、六条、宇喜多を使って精神的に追い詰めてきた。  極めつけは京都での研修旅行だった。  部屋を取り忘れていたらしくワタシだけがマンガ喫茶に泊まることになった。  全て富山が仕組んだことだった。    旅行を終えて鬱々とした気分で大学に向かっていた。列車を降りて夕凪駅にたどり着く。バス停に向かっているときだった。ニット帽をかぶった男が近づいてきた。 「山田サンだよね?戦国ゼミの?」 「そっ、そうですけど」 「君は富山たちを恨んでるよね?」 「あの、誰ですか?」 「怪しいモンじゃない、俺も真瀬のせいで留年したクチだ。俺は滝ってゆーもんだ。殺しちまえ、あんな奴ら」  滝がクイズを出した。 【ゼミ生は9人、真瀬も含めると10人。  標的は富山、瀬黒、六条、宇喜多の4人。引けるカードは1枚、4人を殺せる確率は?】  簡単過ぎる。 「5分の2に決まってるじゃない?」 「正解だ」  滝からコインロッカーの鍵をもらった。《夕凪大学図書室・07》 興奮が治まらなかった。  タクミの書いている『夕凪大学殺人事件』って推理小説を読んでいた。  この大学はワタシの通っていた大学なんだ。
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