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「発情期は、抑制剤でサイクルが管理できる。それを含めてスケジュールを組むのは、不可能じゃないはずだな?」
黒田の問いかけに、直人はこくりと頷いた。
優しい視線が、直人に問いかける。
「もう一度聞こう。それの何が、迷惑だと思う」
「俺は……」
「αだろうがΩだろうが、お前はお前だ。お前の有能さを知っているのは、俺だけではないと思うが?」
会長の前で黒田が言った言葉を思い出す。
Ω性でも、条件が整っていれば仕事が出来る人材もいると。
「わかったのなら、お前は黙って俺に協力しろ。会社を、変えてやる」
―――嫌だ…。
黒田の言葉に、直人は思わず首を振っていた。すっと、黒田の目が冷たい光を放つ。
他人を従えることが当たり前で、歯向かう事など許さないとでもいうかのようなその視線に、直人は思わず硬直する。
「ち…がう、そうじゃない…俺は、お前に……」
言い訳をしながら、直人は混乱していた。
会社を変える為だと、最初に黒田は言った。それなのに…。
それ以外に黒田が自分を特別視するはずなんてないのに…。
―――それが…嫌だ。
直人は自分の気持ちに気付いてしまう。
―――俺は、黒田に…何を……。
「あのっ、そうじゃ…なくて…、俺は……」
何と言ったらいいのかわからなくて頭を抱える直人に、ふうっと黒田が息を吐く。
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