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運命はすぐそこに【オメガバース】
出会いは最悪だった。
「お前、黒木直人とか言ったか。ずいぶん甘い匂いがするな」
黒田眞也(くろだしんや)と名乗った男はそう言って、つかつかと歩み寄ってくる。
百八十センチの直人よりも少し高い位置にある双眸は切れ長で、意志の強さがそのまま瞳に宿っているような光を湛えていた。
名乗られずとも黒田は社内でも有名人だった。国内屈指の有名企業といえど、αの数は極端に少ない。
その稀少なαの一人が、黒田だった。そして、俺、黒木直人(くろきなおと)も。
今にも唇が触れそうなほど顔を近づけられて、直人は鼻白む。
「αだって聞いていたが、嘘だろう?」
有無を言わせぬ威圧感はまさしくα特有のもので、その場の誰もが息を呑んだ。
普段であれば仕事の電話や打ち合わせで騒がしい部屋の中は、黒田の一言に水を打ったように静まり返る。だが。
「冗談じゃない。俺は正真正銘のαだ。入社の時にも診断書は提出してある」
「ふぅん? それにしては、色っぽい目をするんだな」
まるで誘っているようだぞ、と、耳元に囁いて黒田は喉の奥でクツクツと嗤うと、ふいっと踵を返してしまった。
―――何なんだあいつは…。
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