春夏冬屋

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春夏冬屋

 やあ、そろそろ秋も過ぎてしまう頃合いでございますが、いかがお過ごしでしょうか。  秋、といえば、飽き、とも通じ、やれ恋愛事やら、商売なんかにも言うことでございますが、これがあったほうが、物事の緩衝材、のようで少し安心することもございます。  ――や、なんだいあれは。  八っつぁんの見付けましたは「春夏冬屋」と書かれたのれんでございます。  ――なんだいこのけったいな店は。門構えはボロっちいが、年季が入っていいもんじゃねえか。どれ、ひとつ見させてもらおうじゃねえか。おうい、邪魔するよ。  八っつぁんが店に入りますと、灯りも少なく、薄暗いものであります。加えて妙なことは、品物のたぐいが目につきません。  ――や、こいつは妙なこった。(コツコツ)おうい、誰かいないのかい。  ――はいはい、おまたせしてしまってすいませんね。はいはい、今参りますよ。  さ、奥から出てきましたは、狐のように目の細い店主でございます。  ――やあ、店主、おじゃまさせてもらってるよ。ところで品物が見えないんだが、この店は一体何を売ってるのかね。     
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