運命は突然に【オメガバース】

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運命は突然に【オメガバース】

「俺と…付き合ってください」 「はあ?」  唐突なうえに突拍子もない告白に神楽颯(かぐらはやて)が振り返れば、そこには随分と大きな躰を腰から九十度に折り曲げた男の姿があった。真下を向いたその男の顔は、もちろん見えない。  大学のサークル用に貸し出されているプレハブ棟は、颯が見回してみても他に人影はなく、この男の告白の相手は自分で間違いはなさそうではあるのだが…。 「つかお前…誰」  胡乱気に問いかければ、男は僅かに顔を上げてこちらを見た。「付き合ってください」などと下手に言いながらもその目に宿った意志の強さに、相手がαである事はすぐに分かった。 「法学部二年、真壁一臣」  真壁一臣(まかべかずおみ)と名乗った男を、颯はしげしげと見つめる。珍しいと、そう思った。αという人種は、もっと高圧的な奴が多い気がするからだ。だがそれも致し方ないかと颯は思う。連中は生まれた時から持っているスペックが違うのだから。  僅かに上げられた真壁の頤に、颯は指をかけて顔を覗き込んだ。 「ふぅん? で、その真壁クンの事を何も知らない俺に告白してOKもらえると思ってる訳?」     
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