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腰を折ってもなお高い位置にある頭からして随分と身長が高そうな気がする颯である。その真壁の口から流れ出るのは、低く落ち着いた声。
「驚かせたのは悪かったと…思ってる」
「俺、発情期以外に誰かと付き合うつもりないんだけど」
「それは…知ってる…」
一瞬だけ視線を彷徨わせた真壁は、取り敢えずはそれでいいから付き合ってくれと颯に言った。
「お前、αだろ?」
「ああ」
小さく頷く真壁を、颯は品定めするようにじっと見つめた。
正直な話、颯は”番”などに興味がない。Ωは番が出来ると、独特の匂いを発散しなくなる。そんなのはまっぴら御免だった。
どうせΩに生まれたのなら、愉しまなくては損だと思う颯である。
「避妊は当然ながら、絶対に噛まないって自信もって言えんのかよ?」
「約束する。神楽の嫌がる事は…絶対にしないから」
頤を捉えた颯の手を両手で大事そうに包み込む真壁は紳士的で、嘘を吐くようには見えなかった。
ようやく躰を起こした真壁はやはり大きく、百八十と少しくらいはありそうな長身だ。百七十センチに満たない身長の颯は、はからずも見上げる事になる。
不意に体格差に不安が湧き上がる。だが、まあいいかと、颯は鞄からノートとペンを引っ張り出した。
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