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Ωの発情期は、普通の性的欲求などとは比べ物にならない。それなのに躰を気遣われるのは、颯にとって苦痛以外の何ものでもないのだ。だが、そんな颯の心配は、あっさりと裏切られる事になった。
発情期の間だけはめいっぱい愉しむと決めている颯がそれを言えば、真壁はそれまでの優し気な雰囲気を一変させたのである。
「せっかく優しくしてやろうと思ったのにな。神楽が我慢しなくていいって言うなら、俺は遠慮なく欲望を曝け出せる。希望通り満足させてやるよ。お前がもうやめてくださいって懇願するまで、じっくり可愛がってやる」
「ああ…そっちのお前のが…好きになれそ…」
背後に立った真壁に背中を預けるように凭れ掛かり、颯は笑ってみせた。
αだからだろうか、何故かいつもよりも躰が疼く気がする颯である。せがむように上を向けば、真壁は満足そうに口許を歪めて颯の唇を己のそれで覆った。
「っぅ…ぁ、んっ、真壁…」
「どうせなら名前で呼べよ」
「ぁ…一臣…、俺…やばい…」
真壁は軽々と颯の躰を持ち上げて寝室はどっちだと問い掛ける。逞しい胸板にしがみ付いたまま、颯は寝室のベッドの上へと運ばれた。
腕に抱かれているだけで後ろの蕾が戦慄く感覚に、半分溶けかけた思考ながら颯は驚きを隠せずにいた。αというだけでこうも違うものかと、そう思う。
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