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嫉妬
ある所に、今まさに最高の幸福を得ようとしている「A」という男がいた。
Aは、7世代は一生遊んで暮らせる程の資産家の家に生まれたお坊っちゃま。
容姿端麗で頭も良く、さらには丈夫な体も持ち、特段の努力をする事なく勝ち組のレールを歩んできた。
そして今、Aにさらなる幸福が訪れようとしていた。
近々、町一番の絶世の美女と結婚するらしいのだ。
あらゆる幸せを手にするAに、人々は嫉妬に塗れた言葉で呟いた。
「人生そんなに上手く出来てる筈がない。」
その言葉はのちに現実となる。
Aが逮捕されたのだ。
何とスーパーの商品を万引きしようとしたらしい。
窃盗罪での逮捕だった。
それにより、Aと美女の婚約は破棄。
親からも見捨てられ、悠々自適な生活も終りを告げた。
人々はAの人生の転落を心の底で喜んだ。
しかし同時に疑問に思う。
何故この、若く前途有望で幸福を約束された男が万引きなど起こしたのか……。
その答えは簡単だった。
嫉妬だ。
Aはこう供述している。
「私は、誰よりも幸福な男だ。私より幸福な人間が居てはいけない。だからその幸福をぶち壊したのだ。」
「そう。私より幸福な人間が居てはならない。例え、私自身であっても……。」
Aは他の誰よりも嫉妬していたのだ。
最高の幸福が訪れるであろう、未来の自分に。
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