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十一個目の水溜りを飛び超え損ねた一凛(いちか)は右足を思いっきり濡らしてしまった。
「ほんとに一凛はドジだな」
背後で呟かれ振り返ると同時に水滴が飛んできて一凛の顔に当たった。
赤い傘をくるんと回し、依吹(いぶき)がククッと笑う。
いつものように怒るのではなく一凛は依吹の傘をじっと見た。
「なんだよ」
「べつに」
二人は並んで歩き出す。
「学校に着いたら足、温風機で乾かすといいよ」
自分も水をかけておきながら依吹は優しく言った。
「うん、でも濡れるのは慣れてるから。それに依吹の傘、別に変な色じゃないよ」
「うん」
昨日はひどく風の強い日だったから依吹の傘は壊れてしまったのかも知れない。
大きな大人用の赤い傘はきっと依吹のお姉さんのものだ。
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