同居

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本番行為のないものもあった。『同棲』という作品で、和服にかっぽう着をつけたすず香が「おかえりなさい」と笑顔で出迎えてくれる――という状況から始まり、自宅での一日の行動を模した映像集だ。入浴や着替え、布団でのセクシーなシーンはあるものの、相手役は登場しない。 生地をこねるところからパンを焼くというシーンもある。裸エプロンに近い格好で体重をかけて生地をこね、揺れる胸や尻を見せるのが趣旨のようだが、真剣な表情が妙に男っぽく職人めいていて、受けた。基本的にまじめな子なんだろうな、と夢想する。 バンドでボーカルをしていることも知った。雑誌の付録のディスクにライブ映像が入っていた。しばらくは朝、出かける前にそれを観るのが習慣になった。着ていないよりミニスカートのほうがセクシーだし、きれいな脚を落ち着いて見られる。 あれこれ見たうえで出た結論は、最初にたま子が貸してくれた二つで十分だな、ということだった。 借りたものを全部返して、いくらか日も経ち、すず香熱が下火になったころ、所長のほしこに呼ばれた。 住居棟の控え室という初めての部屋に行くと、そこで一人の女性を紹介された。今日から世話係につけるから一緒に部屋で生活するように、と指示される。 ぽかんとした。その女性はすず香そっくりだった。記憶と違うのは服装と髪型、いくらか痩せていること、二三歳年を取っていることくらいだった。
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