同居

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「おりょうよ」 と、ほしこ所長が女言葉で紹介する。 「おりょう――ちゃん?」 「ええ。本社で優秀な働きをしてくれてるんだけど、特別にあなたの担当にもついてもらえることになったの。わからないことがあれば何でも彼女に相談してちょうだい」 返す言葉もない安治に、おりょうも無言で、戸惑いだか恥じらいだかを想像させる笑顔を浮かべて見せた。 二人はそろって部屋に戻った。 おりょうは物静かな娘だった。動きも楚々としている。白いブラウスに臙脂の膝丈スカートというおとなしい格好が似つかわしい。あまりに控えめなので、ビデオ女優の過去をごまかそうとしているようにも見えた。 安治は彼女がすず香なのかを問わなかった。代わりに確信していた。声、話し方、ちょっとしたしぐさがすず香そのものでしかない。 おりょうは紙袋を持参していた。 「お昼はこちらで」 と言葉少なに差し出す。サンドイッチだった。具材はポテトサラダ、カツ、オムレツ、コールスロー、ローストビーフと手が込んでいる。水筒にポトフも持参していた。 「作ったの?」 感激するなり驚くなりで安治が言っても、おりょうは曖昧な笑みを返すだけだった。湯気の立つ水筒の中身をお椀に移して差し出す。早くも妻の行動だ。
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