同居

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それ以降食事は、買ったものを食べるか、一緒に作るか、片方が作ってもう片方が片づけをするという分担になった。安治はそれまで一人暮らしだったから、簡単なものなら作れる。彼が作って彼女が片づけるほうが彼女の機嫌がよかったので、自然とその回数が増えた。 その彼女と違っておりょうは料理が得意のようだ。手の込んだものを手際よく仕上げてくれる。 しかし、得意だから好きとは限らない――安治は警戒を怠らなかった。おりょうはおとなしいから、爆発するのが却って怖い。あの怪力で包丁でも投げつけられたら大変だ。安治は「何か手伝うよ」と近くをちょろちょろしていた。おりょうはむしろ迷惑そうに「座っていてください」と返した。 できたものも一生懸命に褒めた。見た目、味、材料、作り方の上手さ――その必死な態度が却って嘘くさく見えたのか、あまり嬉しそうではなかった。片付けを買って出たものの、作っている間に同時進行で洗っていたらしく、やることはほとんどなかった。 頼んでもいないのに食後にドリップコーヒーが出てきた。安治は自分が父親になったような錯覚を覚えた。 安治は結局口説けなかった。おりょうも思わせぶりな態度をとることもなく、それぞれの寝室に分かれて寝た。
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