4人が本棚に入れています
本棚に追加
「わかんないじゃん、おりょうちゃんにだって好みが」
「でもな、おまえと姫は似合っていると思うぞ」
急に褒められる。安治は軽く照れた。
「そう?」
「ああ、似てるじゃないか」
「…………」
やっぱりか、と頷く。すらりとした体形、面長の輪郭、切れ長の瞳に薄い唇。同じ系統の見た目だと薄々感じてはいた。つまりおりょうは、安治の母や姉に少しだけ似ている。親近感が湧く代わりに劣情が刺激されないのは、そのせいもあるのではと分析する。
「とにかくな」とたま子が男前な表情で言う。
「向こうだって期待して来ているのかもしれんのだから、がっかりさせるなよ」
「……期待?」
上手下手の期待なら、されるだけ困るのだが。たま子は頷く。
「一緒に暮らすイコール、ヤれると思っているだろ」
はっとした。おりょうは女であると同時に男なのだ。『異性』との同居を打診されて、ひょっとしたら喜んだかもしれない。安治はついおりょうを受け身とばかり思ってしまうが、向こうからしたら性行為は「やられる」ものではなく「やる」ものなのかも。
期待がはずれて寂しく一人寝をさせているのではかわいそうだ――安治はようやく決心がついた。
最初のコメントを投稿しよう!