その夜

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数秒動きを止めたおりょうが言った。 「そらないんですね」 「――え?」 「随分と直線的な」 ――反らないと言ったのか。 冷静に感想を言われても困る。そりゃおりょうは、比較するデータをたくさん持っているのだろうけど。 おりょうはその直線的なもので遊び始めた。手のひらで先端を包み、脚のほうへぐいと倒す。そして離すと形状記憶のようにびよんと元に戻る。それを角度を変えて何度も繰り返す。 初めての刺激と、遊ばれているという被虐的な感覚が相まって、意外なほど気持ちいい。その気持ちよさが却って落ち着かなくさせる。一方的に快感を与えられる経験に慣れていない。 「おりょうちゃん……」 ちょっとやめて、という言葉は続かなかったが、おりょうは「はい」と返事をしてやめた。どういう意味に取ったのか、先端をぱくっと口に含み、手で強めに扱き始める。安治は思わず声が出そうになって口を押えた。 今までの彼女で、積極的にそこを触ってきた子はいない。舐めてもらうことはあっても、ごくおざなりだ。自分にない器官に得体の知れない不気味さを感じるのだろう。おりょうは違う。慣れている以前に自分にもある器官だから、怖くもなければ扱いをわかっている。
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