その夜

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翌朝、おりょうの態度はそれまでとまったく変わらなかった。夜は誘わなくても前日と同じように布団に入ってきて、同じようにサービスを施して帰っていった。口にキスをしたり、いちゃいちゃと絡むことはまるでない。 それが日課となって一週間も経つ頃、安治はいよいよ悩んでいた。これでは対等な関係とは呼べない。 しかしどうしても、布団のなかでも外でも性の話をすることができなかった。口に出すことに強いタブー意識が働く。おりょうもまた、行為はするくせに言葉では何も言わないので、話をするきっかけが見つからない。 ひょっとしたらおりょうは体に触られたくないのかな、とも考えた。店で客にしていたようなことはできても、恋人以外に触られるのは嫌で、実は今の関係を楽だと感じているのかも……。
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