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いざ
その晩さっそく実行しようと、帰ってからずっとタイミングを窺っていた。まずは抱きしめなくては……。
拒まれたらどうしようという一抹の不安を覚えつつ、夕食の支度をするおりょうに背後から忍び寄る。何パターンかシミュレーションした結果、顔を見ずに後ろからのほうが抱きつきやすいと思ったのだ。夕食が済んでしまったあとではそのチャンスがない。
声をかけずにいきなり抱きつき、胸をまさぐる。前の彼女なら本気で怒り出しかねない行為だ。
「あん」と戸惑った声を上げておりょうが顔を向ける。安治の手を軽く押さえている。
怒ってないかな――と怯えつつ顔を近づける。おりょうは抵抗なく目を閉じて唇を差し出した。柔らかな唇の奥はたっぷりと潤っていた。ディープキスの経験があまりない安治の口内に薄い舌が入ってきて舐めまわす。おりょうは自分から安治の首に縋りつき、背伸びをして体を密着させてきた。
――なんだ、やっぱり、したかったんだ。
ほっとすると同時に愛しさがこみ上げてきた。細い体を抱きしめ、体温を味わう。おりょうはキスをやめようとしなかった。角度を変えて吸いつき、執拗に舌を絡め合う。息が熱くなる。安治の手は自然とおりょうの腰に伸びていた。薄く柔らかい双丘を撫で、その谷間にも指を這わせる。おりょうはまったく嫌がらないばかりか、もっととねだるように甘い吐息を聞かせた。
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