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「そっか。じゃあ、俺が最初の恋人になるわけだ」
「え?」
何気ない呟きに大げさに反応する。急に戸惑いと恥じらいめいた表情を浮かべるや、どこか不貞腐れて、
「私は体のお世話をするだけです」
と言い放つ。
そのあとはややご機嫌斜めだった。キスをしても胸を触っても喜んでくれない。反対に居心地が悪そうに目線を逸らす。それは嫌がっているというよりも恥じらいのしぐさに見えた。
「とっていい?」
腰を覆うタオルを触りながら聞くと、
「ダメです」
と即答された。
「あとは自分で洗うので、布団で待っていてください」
「舐めてあげようと思ってたのに」
おりょうは目のふちを赤くして睨んだ。「いやらしいことを言わないで」と言っているようだ。
急にふつうの女の子になったな、と思いつつ、安治は風呂場を出た。
三十分ほども経ってからバスローブ姿で、冷たいミネラルウォーターをお盆に載せてやってきた。
先ほどの態度を取り繕うように体を寄せて「どうぞ」とグラスを渡してくる。腕に抱きつき指を絡ませながら色っぽく「舐めてくれるんですか?」と囁く。
「嬉しい」
心境の変化には触れず、安治はおりょうの頭を抱いた。しっとりして温かい。
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