いざ

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「……する……」 小さく言うと、がばと顔を近づけてきた。思わず目をつぶった安治の上唇、下唇、口の端にそれぞれ舌を這わせ、自分の唇で挟み、軽く引っ張る。それから口をつけて口を開かせ、舌で舌を舐める。安治は流れ込んできた唾液にむせそうになるが、それも許さない激しさで舌を吸われる。 ――慣れれば気持ちいいのかな。 安治は口の端から垂れる唾液を拭きたい欲求を堪えつつ、口のなかのものを飲みこんだ。 おりょうは一旦安治から下りると、自分の尻をこそこそ触った。挿れる準備だなと察して体を起こす。安治は正常位でしか番ったことがない。 じきにおりょうがまたのしかかってきた。 「え」 押し倒されながら、まさかと思う。初めて関係を持つのに、正常位以外なんだろうか。 「ど、どうやるの?」 「私が動きますので、安治さんは楽になさっていてください」 それじゃあまるで風俗だ。二人でするのに、女の子にだけ負担をかけるのも好かない。 「俺が上になるんじゃ嫌だ?」 「安治さん、経験ないでしょう?」 『娘』と、という意味なのかもしれないが、その言い方はまるで安治が童貞だと決めつけているようで、少し傷ついた。そんなに下手に見えるのだろうか。経験はあるよと言い返したかったが、威張れるほどの経験でもないと思い直して黙る。
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