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白鷺ピクニック
「まもなく、3番線に電車が到着いたします。」
ホームにアナウンスが響き渡る。
私は駅前の歩道で、それを聞いていた。
電車がホームに到着したようだ。
改札を通り、ホームへの階段をゆっくりと降りる。
階段を上がってくる人たちとすれ違う。
私の足取りは軽く、ゆったりとしている。
大学生のころはよかった。
このごろ、つくづく思う。
今みたいに責任感やストレスとは無縁の生活だった。気乗りしない授業は、出席せずに単位をあきらめれば済む話だったし、嫌なことからは逃げればいいと考えていた。
就職してからはそうはいかない。逃げることは許されない。嫌な上司とも上手くやっていかなければならないし、与えられた仕事はこなさなければならない。すべてが「~しなければならない」に支配されていて、ストレスや体調不良と向き合いながら、1日1日をなんとか生きている。
だけど、大学生に戻りたいかと聞かれたら、そうでもない。
ストレスとは無縁の平穏な生活だったけど、人生の絶頂期だったわけでもないから。
私は遅咲きの人間なのだ。若さは武器かもしれないけど、30代半ばの今の方が、判断力や行動力、そして強さがある。だから20歳のころに戻りたいとは思わない。
私が欲しいのは時間だ。自分と向き合うための時間。本を読んだり、景色を眺めたり、ただ静かに考え事をするための時間が欲しいだけ。大学生のころは、そんな時間がいくらでもあった。
電車のドアが閉まった音をしっかり聞いてから、私はホームに降り立った。
電車はカタンカタンと、次の駅へと向かっていく。
すべては予定通り。いつものベンチに座り、駅前の自動販売機で買った熱々のコーンスープの缶を鞄から取り出す。
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