4 忘れたくない普通の日

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 精一杯の捨て台詞を吐いて部屋を出ていった。急展開についていけなかった取り巻きが慌てて追い掛ける。  瑠珂と二人、取り残された。 「……はぁ」  未だ保たれた二歩分の距離に、瑠珂の気まずさを感じた。ひとまず礼を言う。 「ありがとな、瑠珂」 「ううん。間に合ってよかった」 「瑠珂」 「うん」  聞きたいことも話したいこともたくさんあった、のだが。 「立てない……」 「えっ!?」  どうやら腰が抜けてしまったらしい。何とか立ち上がろうと奮闘していたら、瑠珂が吹き出した。すぐそばにしゃがみ込んでくる。 「もー。まぁくんは可愛いな。直るまで一緒に待ってあげる」 「笑ってる瑠珂のほうが、可愛いよ」  その屈託のない表情に感激して、真顔で告げていた。瑠珂はぱちぱちと目を瞬かせたかと思うと、ついに声を出して笑い始める。  今じゃないかもしれない。でも今言いたい。 「運命のオメガが他にいたかもしれないのに、僕を選んでくれてありがとう。すごく嬉しい」  刹那、二人を取り巻く時間が止まった。  瑠珂の飴玉のように艶めく瞳が和真を捉える。和真もまっすぐ見つめ返す。 (あ、)  飴玉が溶け出して、瑠珂の頬を伝った。上半身は動かせたので、舌でその雫を掬う。 (甘い)  砂糖細工のような瑠珂の身体を、ぎゅっと抱き竦めた。     
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