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数分で足腰に力が入るようになり、早々にラブホテルを後にした。小指と薬指だけ握ってくるのが瑠珂らしくて、まだリスタートラインに立ったに過ぎないのに顔がにやけてしまう。
大きな通りまで出てタクシーを拾うと、瑠珂も素直に乗り込んできた。
「うち……じゃないほうがいいか? 冷却期間中だし」
「あんな泣かせといてそれ言う?」
瑠珂の誤解を招く返答と、早く行き先を言えという運転手のプレシャーに負けて、自宅の住所を告げる。それ以降、瑠珂は無言だったが、座席の上に置いた手指は変わらず絡められていた。
「あー、久しぶりだな」
部屋に入るなり、瑠珂がベッドへダイブして大の字になる。よく考えれば月初の大型連休以来なので二週間しか経っていないのだが、和真としてもその間ずっと大事なものが欠けて不完全な感覚だった。
「瑠珂」
和真もベッドに腰掛ける。まず何から話そう。何から聞こう。
「……なんであのラブホテルにいるってわかったんだ?」
我ながら小さな問いから入ったとは思うが、段階を踏ませてほしい。
「『プロメテウス』で十九歳の子口説いてたよーちゃんが連絡くれた。相手ほっぽって追跡してくれたみたい」
瑠珂は無防備にうつ伏せになったまま、歌うように囁いた。日中、洋佑と交わしたやり取りを思い返す。
「もしかして、最有力候補」
「そそ!」
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