365人が本棚に入れています
本棚に追加
それは悪いことをした。可及的速やかに埋め合わせしなければ。もっとも、瑠珂との話が済んでからだが。
「で、瑠珂はどこにいたの?」
「んー? 別のお店かな」
「部屋の鍵はどうやって」
「普通にフロントのおにーさんに頼んで開けてもらったよ。おれも乱交パーティーするからって」
ぺろりと舌を出してみせる。南央斗たちの仲間の振りをしたわけか。
「おれも質問していい?」
「……うん」
瑠珂は質問権を確保してから、にじにじと体勢を変えた。和真の腿に頭を載せて見上げてくる。これでもう逃げられない。
「なんでナオとあんなことになったの」
「……僕が、ちょっかい出したから。瑠珂と一か月何もなかったら、好きにしてもいいって」
「ふうん……」
淡々と、事実のみ告げるつもりが、声が震える。瑠珂の睫毛も戦慄いていた。
「それでナオってば先月くらいから急に連絡してこなくなったんだ」
「でも、何もなかったよ」
「何も?」
「何も、と言えば、何も」
判定基準次第ということにして濁す。瑠珂もまったくの潔白ではないからか、それ以上踏み込んではこなかった。
不意の沈黙に、瑠珂の髪へと手が伸びる。瑠珂の手も和真の眼鏡へ伸びてきた。何とか回収したもののフレームが曲がってしまい、明日にでも修理に出さねばならない。
最初のコメントを投稿しよう!