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入ってきたのは、洋佑だった。いつもより髪型も服装も気合が入っている気がする。
「え……偶然か?」
「そんなわけあるか。おまえのストーカーじゃあるまいし。ボスに誘われたんだよ、新しい彼氏見せろって。ほらあの人歳下好きだろ、旦那も八つ下だし」
「それ、誘われたんじゃなくて、脅されたように聞こえるな」
洋佑は肩を竦めてから、小笠原が使っていた椅子を引いた。隣の椅子は鞄が鎮座しているのだ。だが腰を預ける前に扉へと戻る。今度は、鎖骨くらいまでのワンレングスヘアにきめ細かな肌、どう見ても少女に見える顔立ちと体格の少年がガラスの向こう側に立っていた。
「サンキュ」
まだ半分以上残っているハイボールのグラスを持ってきてくれたらしい。洋佑が礼とともに軽く口づけた鎖骨の上には、確かに喉仏があった。
「もしかして、今のが」
「そー。芙優ちゃん。名前まで可愛いだろ」
「ちょっと待ってくれ」
引っ掛かりがあり過ぎたが、その前に言わなければならないことがある。頭の中で順番を整理した。咳払いののち、正面の親友を真摯に見つめる。
「まず、先月の南央斗の件、本当にありがとう」
「あーうん。もう瑠珂みたいなことするんじゃありませんよ」
「はい」
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