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ただ、まだひとつ引っ掛かる。
訊くかどうか少し迷った。だが、洋佑は基本的に仕事と恋人を優先するため、こうして二人きりで話せる機会はしばらくない――という理由をつけて息を吸い込む。
「それにしても、あの子とか瑠珂とかが好みなら、なんで僕を?」
一度目に助けてもらった夜、洋佑は確かに「興奮してる」と言った。オメガのフェロモンに中てられた気の迷いだった? でも、瑠珂と前々から関係を持っている。牽制の対象だったわけだ。
洋佑も洋佑で、冗談交じりに流したりしなかった。片手で頭を抱えるように肘を突く。
「俺、おまえのこと結構好きだったよ。でもいざセックスするチャンスがめぐってきたら、これは友達としての好きかもしれないって思った」
「……うん」
小笠原はまだ戻ってこない。仕切りのないテーブル席のほうから、ひそやかな笑い声が聞こえた。腹を割って話せるように取り持ってくれたのが半分、家族や店の常連客に引っ張りだこなのが半分だと思われる。
その間に、洋佑の独白のような言葉が続いた。
「男同士ってゲイでも難しいよな。友達としての好きなのか恋愛としての好きなのか。ちんこ勃ったとしても、性欲と恋愛感情はまた別じゃん?」
「確かに」
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