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「確かに、入学したばっかりの頃の晶って、地に足が着いていないような感じだったよね。いっつもテンション高くてふわふわした足取りだから、人にぶつかるわ、よくこけるわ――って、それは今もか」
「そこまで言うのなら見つけ出してやろうじゃないの。難しいかもって思ったけど、よく考えたら簡単よ。掲示板に貼り紙すればいいんだから」
学部の掲示板には、試験日程や休講など講義に関する連絡のほかにも、サークルの連絡や勧誘、研究室が開催するゼミのお知らせなど、様々な情報が掲示されている。学務課に届けを出せば誰でも利用できるのだ。
「晶の受験票を拾って、お菓子をくれた人を捜していますって?」
「そう。心当たりのある人が連絡できるように、SNSのアカウントでも書いておけばばっちりよ。貼り紙を作るだけで、あとは恩人の彼が名乗り出てくれるわ」
「……晶、それだと、全然関係のない変な人が連絡してくるかもしれないよ」
「あ」
加弥子に指摘されるまで、そんな危険性はまったく考慮していなかった。
「このご時世、そんな個人情報を、学内とはいえ掲示板に公開するなんてやめた方がいいって」
貼り紙を見た恩人が名乗り出て、めでたく一年ぶりに再会を果たすという単純な図式しか思い描いていなかった。
わたしの名案は、こうしてあえなく潰えたのである。
そして、追い打ちをかけたのはこの一言だった。
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