必勝の条件

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 図書館に入ってからだいぶ経っているし、手袋くらいは外してもいいかもしれない。ノート類を小脇に抱えて外そうとした時、いきなり背後から誰かにぶつかられて、抱え直したノート類が足元に散らばった。  コピーし終えた学生の一人が、脇を駆け抜けていく。よほど急いでいるのか、その学生はちらりとわたしを見て「ごめん」と言ったものの、そそくさと行ってしまった。  むっとしたが、追いかけて文句を言うほどの気概はない。 「ああ、もう」  それよりも散らばったプリントたちを回収しなければ。慌ててしゃがんで拾おうとしたが、手袋をはめたままでは思うようにいかない。 「手伝うよ」  落ちたプリントやノートのほとんどを寺島君が手早く拾い集め、「災難だったな」と渡してくれた。 「ありがとう」 「高橋は、よく物を落とすな」  つい先日も、寺島君がスケジュール帳を拾ってくれたのを思い出す。今のはぶつかられたせいだが、加弥子や寺島君の言う通り、わたしは本当によく物を落とすのかもしれない。  そう思っていたものだから、知らず知らずしょんぼりとしていたのだろう。 「悪い悪い。そんなに気落ちするようなことじゃないって。これでも食べて、元気出せよ」  寺島君は少し焦った様子で、バッグの中からお菓子を取り出した。  それは、この前と同じ、ウエハースチョコのお菓子(やはりお得パック用)だった。       ○ 「遅かったね。コピー機、混んでたの?」     
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