必勝の条件

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「うん。加弥子、ノートありがとう」 「どういたしまして――って、どうしたの、それ」  わたしがノートを差し出した時、寺島君のくれたお菓子を、加弥子はめざとく見つけた。 「寺島君にもらった」 「また、どうして」 「コピー機のとこで寺島君に会ったんだけど、その時プリントとか落としちゃって……」  咲ほどの一部始終を話すと、加弥子は「なるほどねぇ」と言い、ほかの友人たちは「ぶつかった人が悪いよね」と慰めてくれた。 「また験担ぎをもらえたわけね。よかったじゃない」  その前に人にぶつかられたのだし、それほどよくはないと思う。しかし、この前も寺島君から同じお菓子をもらったことや、受験の日の一件を知らない友人たちが、どういうことだと訊いてきたので、うやむやになってしまった。 「でも、二度あることは三度あるっていうから、気を付けた方がいいんじゃない?」  試験勉強そっちのけに皆で雑談を一通りし終えた後、加弥子が言った。  物を落としてお菓子をもらったのはすでに三度目、寺島君に限ってならば今回で二度目である。しかし、いくらわたしが物をよく落とすとはいえ、三度目はないだろう。短期間に似たようなことが二度もあれば、わたしだって三度目がないように注意するのだ。     
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