1人が本棚に入れています
本棚に追加
「うん。加弥子、ノートありがとう」
「どういたしまして――って、どうしたの、それ」
わたしがノートを差し出した時、寺島君のくれたお菓子を、加弥子はめざとく見つけた。
「寺島君にもらった」
「また、どうして」
「コピー機のとこで寺島君に会ったんだけど、その時プリントとか落としちゃって……」
咲ほどの一部始終を話すと、加弥子は「なるほどねぇ」と言い、ほかの友人たちは「ぶつかった人が悪いよね」と慰めてくれた。
「また験担ぎをもらえたわけね。よかったじゃない」
その前に人にぶつかられたのだし、それほどよくはないと思う。しかし、この前も寺島君から同じお菓子をもらったことや、受験の日の一件を知らない友人たちが、どういうことだと訊いてきたので、うやむやになってしまった。
「でも、二度あることは三度あるっていうから、気を付けた方がいいんじゃない?」
試験勉強そっちのけに皆で雑談を一通りし終えた後、加弥子が言った。
物を落としてお菓子をもらったのはすでに三度目、寺島君に限ってならば今回で二度目である。しかし、いくらわたしが物をよく落とすとはいえ、三度目はないだろう。短期間に似たようなことが二度もあれば、わたしだって三度目がないように注意するのだ。
最初のコメントを投稿しよう!