必勝の条件

2/32
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
 今朝方、後期試験の時間割が張り出されたのだ。今は二時限目の講義が終わった正午過ぎ。これから始まる昼休み前に時間割を確認しようと、寒空の下、学生たちが大挙して押し寄せているわけというわけである。  大学に入学してもうすぐ一年。中高一貫の女子校で学んだわたしも、理学部に充ち満ちている男臭さにはすっかり慣れた。  なんのこれしき、負けてなるものか。  時間割が見えるところまで「すみません」と人をかき分けながら強引に進んでいく。  多少もみくちゃにされながらも、目的を果たせそうな位置までたどり着いた。スケジュール帳に急いで書き写す。苦手な科目の試験が同じ日にあったりするが、とりあえず今はメモすることを優先。嘆くのは後からでいい。  メモを終えてスケジュール帳をバッグに仕舞おうとしたが、押し合いへし合いする周囲の人に肘をぶつけてしまいそうだった。一旦諦めてここから脱出しよう。  先ほどと同じように人の間をぐいぐいと進んでいたら、突然目の前に大きなバッグが現れた。とっさに避けようとしたが、肩をぶつけてしまう。その拍子に手にしていたスケジュール帳が転げ落ちて、「ぎゃっ」と乙女らしからぬ心の声を上げていた。     
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!