必勝の条件

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 駐輪場には登校してきた学生たちの姿がちらほらあるが、ラッシュは過ぎているようだった。試験開始まであと十分ほど。急がなければと周囲を見回すが、駐輪場は出入り口に近いところから埋まっていて、離れるほどに空いている。今はその十数メートルさえも長い。近くの隙間に無理矢理自転車を押し込むと、駆け足で試験会場の教室へ向かった。  一限目の教室は駐輪場から二棟向こうの三号館、四階である。少しでも早く教室へ入り、最後の悪あがきをしたくて焦っていた。そのせいで、駐輪場の出入り口のそばにあった薄氷に気付かなかった。  氷を踏みしめたわたしは、思い切り足を滑らせ尻もちをついていた。肩に提げていたバッグが腕から滑り落ちて、中身が飛び出す。駐輪場にいた学生の何人かが、こちらを見た。どれだけ勢いよく転んだのだ、と自分に突っ込みながら慌てて拾い集めると、恥ずかしさもあって逃げるようにその場を後にした。 「おはよう。なかなか来ないから心配したわよ」  教室には、とっくに登校していた加弥子がいた。ノートやプリントにのんびり目を落としていた友人は、これから講義でも受けるような余裕があった。 「寝坊しちゃった……。間に合ったからよかったけど」  ため息をついて、加弥子の二つ前の席に腰を下ろす。いつもなら隣に座るが、試験の時は学生番号順と決まっている。席次表は黒板に貼ってあった。  学生番号がわたしより後で、加弥子より前の人はまだ来ていないようだった。試験開始まで十分を切っている。余裕があるのか、わたしと同じく寝坊をしているのか。     
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