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わたしの後ろって誰だっけ。でもそんなことより最後の悪あがき、と筆記用具やノートを出し、最後に学生証を取り出して――。
取り出そうとするが、見当たらない。
試験時に学生証は必携だ。試験中は机の端に置いておかなければ、本人がいても出席したと認められない。
内ポケットに入れておいたはずなのに、ない。わたしはバッグの中身をすべて机の上に出した。しかし、学生証はなかった。
「晶、どうしたの?」
目の前でごそごそとしているから、いやでも加弥子の目に留まっただろう。後ろから声がかかる。
最悪の事態を認めるしかなかった。
「どうしよう、加弥子。学生証がない」
「忘れてきたの?」
加弥子が立ち上がり、わたしの席へ来る。
「そんなはずないと思う。昨日と同じバッグだし、昨日はあったもん」
しかし、学生証はどこにもない。泣きたい気分だが、泣いても事態は解決しない。
「……落としたんじゃないわよね?」
わたしが眉を八の字にしているので、加弥子が心配そうな顔をする。そんな加弥子の一言に光を見出した。
駐輪場で転んだ時に落としたのかもしれない。否、きっと落としたのだ。
「駐輪場にあるかも」
「一緒に探すよ」
わたしのそそっかしさを知っている加弥子は、駐輪場で転んだと察したのだろう。急いで教室を出ようとするわたしに付いてこようとする。
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