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寺島君のおかげで学生証を取り戻したわたしは、無事試験を受けることができた。単位が取れるかどうかはまだわからないが、きっと大丈夫。寺島君から、験担ぎのお菓子を三回ももらったのだから。
効果のほどは実体験済みである。わたしの予想に間違いがなければ。
「どうなるかと思ったけど間に合ってよかったね、晶」
試験が終わると加弥子がやって来た。わたしは、帰り支度をしている寺島君を振り返る。
「うん。寺島君が拾ってくれたから」
「また?」
「そう、また。寺島君、いつもありがとね」
すると彼は、わたしをちらりと見て、ぼやいた。
「俺は高橋の落とし物拾い係じゃないんだから、もう落とすなよ」
「ごめんね。これからはちゃんと気を付けるよ」
「今までは気を付けてなかったの?」
加弥子が人の揚げ足を取る。寺島君は笑っていた。
「じゃ、俺、図書館に行くよ」
二限目は試験がないらしい。寺島君はバッグを肩に提げ、席を立った。
わたしと加弥子は二限目もあるので、次の試験会場となる教室へ移動しなければならない。
「加弥子。先に行っててくれる?」
教室を出たところでわたしが言うと、
「いいけど、今度こそ遅れないようにしなよ」
加弥子は何を思ったのか、にやりと笑った。
休憩時間に入ったので、たくさんの学生が廊下や階段を行き交っている。足早に人の間をすり抜けて階段を目指した。人は多いが、背の高い彼はすぐに見つかった。
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