必勝の条件

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 現れたのは、友人の源(みな)川(がわ)加(か)弥(や)子(こ)である。お昼ご飯を一緒に食べる約束をしていたのだ。 「ごめんごめん、講義が延びちゃって。それに、人の中に埋もれてる晶(あきら)を見つけるのにも時間かかっちゃった」 「えー、ひどーい」 「それよりここ寒いし、早く学食行こ。お腹減ったし、温かい物食べたい」  待っている間にわたしの体は冷えていた。そして、加弥子に応えるようにお腹が切なく鳴いて、彼女の笑いを誘ったのだった。       ○ 「試験の時間割、もうメモったんだ」  加弥子は天ぷらうどん、わたしはとんかつ定食にした。  うっすら湯気が立つ昼食をお盆に載せて探し回った結果、学生でごった返す食堂の片隅に、なんとか二人分の席を見つけることができた。 「うん。加弥子を待ってる間、暇だったから」 「時間割、どうだった?」  「一日目と二日目に必修科目が集中してて、三日目は一限目の有機化学概論に始まる三連戦。厳しい戦いになりそう」 「うそ、マジで?」  えび天を口に運ぼうとしていた加弥子の手が止まる。 「ちょっと見せてくれる?」 「うん、いいよ」  箸を片手に持ったまま、自分と背もたれの間に置いたバッグからスケジュール帳を引っ張り出した。     
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