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片手でメモしたページを開こうとしたが、うまくいかない。またしてもスケジュール帳はわたしの手から転がり落ちて、椅子の下に着地した。
「ああっ」
「箸を置かないからよ」
加弥子の呆れ声を聞きながら拾い上げたまではよかったのだが、かがめた体を起こそうとした時、テーブルの端で側頭部を強打した。
「そそっかしい子ね、相変わらず……」
うめくわたしを見ても、加弥子は心配するどころか完全に呆れ顔である。頭をぶつけたついでに箸まで落としたのだから、呆れられても仕方はないのだが。
スケジュール帳を加弥子に渡してから、新しい箸を取りに行った。戻って来ると、加弥子は開いたページはそのままに、くるりと裏返して表紙を見ていた。
「どうしたの、これ。汚れてるじゃない」
わたしは気が付かなかったのだが、カバーに汚れでも付いていたのだろう。
「さっき落としちゃったから、その時に汚れたのかも」
すると、加弥子の表情がどこかで見たことのあるものに変わる。
「晶って、ほんと、よく物を落とすね」
加弥子の呆れ顔に、寺島君の顔が重なる。
「……寺島君にもさっき言われた」
「寺島君に?」
「そう。さっきそれを落としたら、寺島君が拾ってくれたの。そんでもって、単位まで落とすなよとか言って、お菓子くれた」
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