必勝の条件

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 寺島君からもらったお菓子もバッグから出してみせる。加弥子がお菓子の商品名を口にした。 「なるほど、験担ぎってわけね。優しいじゃない」 「うん。それで思い出したんだけど、前にも同じようなことがあったんだよね」 「何か落としたってこと? ついさっきも落としまくってたけど」 「そうなんだけど。入試の時に、受験票を落としたの」  ほぼ一年前の、大学入試の時のことである。 「普通は落とさないように、細心の注意を払うもんだと思うけど」 「でも、落としちゃったんだよね」  受験生だった時は「落ちる」や「滑る」はもちろん禁句。試験で使うシャーペンや消しゴムだって落とさないよう、今思えば神経質なほど気を遣っていた。  そのくせ、肝心の受験票を落としてしまったのだ。       ○  今は学舎であるここが試験会場だった。  試験を受ける教室番号と場所を確かめるために、校舎の入り口に張り出されたボードには受験生の人だかりができていた。ちょうど先ほどの掲示板前とよく似た状況である。入試の時の方が、一秒でも早く教室へ入って最後の追い込みをしようと誰もが必死だったから、もっと押し合いへし合いしていたと思う。  身長の低いわたしは、そこでも苦労する羽目になった。     
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