においのゆくえ

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においのゆくえ

 全部で四部屋しかない二階建ての小さなアパートの二階に、わたしはひとりで住んでいた。  近くにはコンビニ、ちょっと歩けばスーパーがあって、生活するのにそれほど不便はない。車で十五分も走れば大型ショッピングモールもある。このあたりは田舎で車移動が基本だから、アパートは駐車場付きだ。2DKと部屋は広いが、駅から少々遠く築年数は二十年を越えていたので、階下の住人が九月末に引っ越してから、しばらくの間空室だった。  ようやく人が入ったのは、年が明けてから。正月気分が抜けたばかりのある日、仕事から帰ってくると駐車場に見慣れない車があって、空いていた部屋にはカーテンがかかっていた。この時期の引っ越しだと、年末年始はその準備に追われて大変そうだが、引っ越し代は安いのだろう。  階下の住人が引っ越しの挨拶に来ることはなかったので、自分の真下にどんな人が住んでいるのか、しばらくはわからなかった。     
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