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私とハヤショーはなかなか会えずにいた。そして二人とも違う生活を送っていた。再びめぐり合うその時まで。 ハヤショーは私のお気に入りのお客さんだった。初めて会った時から好きだった。私より四歳年上で、クールで、ドライで、冷たい人だった。最初は冷たかったけど、少しずつ仲良くなっていくと、義理堅くて熱い人だということがわかった。客と営業マンとして仲良くなれたのが本当に嬉しかった。だから会社を辞めることを一番に伝えた。 ホワイトデー・イヴに、ハヤショーは「これからもよろしく」と言ってはいたけど、私から連絡できる訳もなく、ハヤショーからも連絡はなく、宙ぶらりんの言葉と気持ちは、このまま社交辞令として消えていきそうだった。 私は転職のタイミングで、堺市に引越しをした。部屋のベランダからは阿倍野ハルカスが見えた。それを見ながら思う。ずいぶん遠いところに来ちゃったな、と。でも後になってこれでよかったと気づく。
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