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そう言って、彼女は一人で軽快なステップを踏み始めたので、慌てて制した。
「下に響くからやめろ。それにしても、狐のステップは思いの外、人間らしいんだな」
「狐はステップすら踏まないよ! 妖狐の私の専売特許!」
「いや、人間の専売特許だったはずなんだが……」
「人間の知的財産法違反!」
「法廷で争おう」
「嘘ですやめて、私が負けるから」
「仕方ないな。稲穂は踊るの禁止」
「別に踊ることを禁止されても人間的には困らないよね。そりゃあ、踊ることを生きがいにしている、芸術人なら話は別だけど」
「というか、さっきの話に戻すが、そもそも、稲穂の言っている踊りって何を指してるんだ?」
「だから、さっきやったステップみたいなものだって」
「じゃあ、魚が楽しそうに水槽を泳ぎ待っていることは?」
「魚が……、ってずるい! 私に魚が踊っているって言わせたいんでしょ?」
「その通り。ついでにお花だって踊ることはある」
「それ、紙の上限定の技でしょう。なんていうんだけ、えっと、そう! 擬人法!」
「稲穂は彼らが踊ってないとでもいうのか?」
「当たり前! 花が踊るなんて、本当に踊ってたら腰が五メートル先に抜けるわ」
「腰は長い距離抜けるんじゃない。長い時間抜けるんだ」
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