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「それなら私は顔を傾げるね」
「頼むから顔じゃなくて首を傾げてくれ」
「それより! 擬人法を言葉でごまかさないでよね」
「いや、ごまかしたつもりはない。大真面目な話、彼らは踊っているんだよ」
「根拠を求める!」
「じゃあ何故、魚が踊っているという表現が生まれたか考えてくれ」
「……、魚が踊っているように見えたから?」
「そうとしか考えられないだろう?」
「だからといって、実際魚が踊っているかどうかなんてわからないじゃない」
「でも、それなら最初は人も、自分が踊っているかなんて分からなかっただろう?」
彼女は小首を傾げて、足をこちらへ伸ばしてきた。いつも着ている、僅かな青色の入った白装束が尻尾の揺れに合わせて音を立てている。
「あれ、なんかおかしくないように感じる?」
「何もおかしいことは言ってないから当然だ」
「それなら、踊るって何?」
「さあ? でも、とりあえず踊りたいだけじゃ、踊れないことは分かっただろう?」
「でも、私はさっき踊りたくて踊れたよ?」
「それが、人間の専売特許だ」
「私もできるけどね」
「さっき禁止したからできないだろう」
「あ、忘れてた」
彼女はハッとした顔で、すぐに僕のベットに寝転がった。
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