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「よし。我が家の狐が寝たところで、楽しみにしていたケーキでも食べるか」
「あ」
「ん、どうした? まさか、俺が食べないとでも思って、でも黙って食べればバレてもシラを切り通せばいけるんじゃないか、なーんて浅はかな思考で、人間様の寝る前のスイーツを盗んだわけじゃ、無いよな?」
「いつから気づいてたの!?」
「さっき、最初にお前が鼻歌を歌ったくらいでな」
「でも、そう! 人間の世界では証拠が無ければ負けないはず」
「お前がリビングまで歩いた時は、その黄金色の毛が落ちてるからすぐわかるんだよ」
彼女は観念したようで、ようやく肩を落として自供を始めた。
「すいません。心が踊った勢いで、つい」
「そこらへんは動物らしいんだな。踊って仕舞えば自分でやめられない」
「踊り足りないのよ。人間様と違って、自由だからね」
「ま、稲穂も次第にわかるよ。踊り続けることの苦労も、踊れないことの苦しみも」
彼女は足を伸ばしたまま僕の心臓のあたりを見つめ、僕の右肩に手を伸ばし、それから言葉を発した。
「一緒に踊ってあげようか?」
「お前は踊るの禁止だって言ったろ?」
「人間の監視付きでも?」
僕は彼女の顔を見て、それから呆れたように彼女の頭を軽く撫でた。
「人の心配する暇があるなら、スイーツ盗んだ反省をしなさい」
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