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永劫ノ章
「永劫」とは、誰しもが信じていない事柄である。
「君を永遠に愛するよ」
「あなた!」
「シェリー!」
二人は熱く抱擁し、唇を重ね合わせる……
珍しく親のいない家の居間で、彼女は日本語訳された洋画を物珍しそうに見つめていた。しかし、エンディングロールが流れ始めた途端、ソファーから飛びかかってくる。
「あなた!」
「やめろ!」
彼女に突撃された僕は部屋の中で尻餅をついていた。
「えへへー。やっちゃった」
「うざいからやめろ。なんでお茶を頭から被らなきゃなんねえんだ」
「たまにはいいでしょ?」
「たまにもお茶なんか被りたかねえよ。まったく、まずはこの動物特有の衝動性を無くさないとな」
「私は妖狐よ!」
「妖狐は人間に迷惑をかけ……るか」
「えっへん」
「なんだが今日はえらく上機嫌だな。ま、まずは床拭くの手伝え」
「久しぶりにテレビを観れて楽しかったからね!」
「あんなに臭い中世風の物語なのに?」
「ふん。泉はどうせ、君を永遠に愛するよ! なーんて台詞言えないし」
「言えないな。永遠なんて不確実なこと」
「ほら! ロマンなんてありゃしない」
僕は彼女にティッシュペーパーを渡しながら言う。
「稲穂。お前を永遠に愛してやる」
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