永劫ノ章

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 一瞬、彼女の耳が大きく跳ねるが、尻尾を振りながらも冷静な声音で僕に返す。 「ふん。ティッシュを渡しながらじゃなかったらあと5点プラスね」 「その割には動揺しているようだがな」 「してないしてない。狐に誓ってしてないわ」 「お前自身に誓ってどうする……。でも、俺のさっき言った言葉、信じれなかっただろう?」 「信じたいとは思ったし、信じないわけないじゃない」  僕は彼女が人間でなく、純粋無垢な動物であったことを思い出し、頭を抱える。 「すまん。じゃあ言う。さっきのは嘘だ」 「え!?」  わかりやすく、彼女の耳が垂れ、尻尾に元気が無くなる。そして、怒ったように顔をしかめながら言う。 「やっぱり、人間ってゴミ屑だね」 「ああ、俺も含めてな」 「謝りもしないの?」 「人間は謝れる。から、謝ったろう? すまんって」 「もう一度謝りなさい。クソ人間」 「クソ人間です。すいませんでした」  彼女は僕が垂直のお辞儀を決めたのを見て、再び床をティッシュで拭き始めた。 「もう。許してあげるわ」  僕は彼女の顔を見て、小さな声で告げた。 「稲穂は今のまま、純粋でいてくれよ」 「ん? 何か言った?」     
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