4人が本棚に入れています
本棚に追加
一瞬、彼女の耳が大きく跳ねるが、尻尾を振りながらも冷静な声音で僕に返す。
「ふん。ティッシュを渡しながらじゃなかったらあと5点プラスね」
「その割には動揺しているようだがな」
「してないしてない。狐に誓ってしてないわ」
「お前自身に誓ってどうする……。でも、俺のさっき言った言葉、信じれなかっただろう?」
「信じたいとは思ったし、信じないわけないじゃない」
僕は彼女が人間でなく、純粋無垢な動物であったことを思い出し、頭を抱える。
「すまん。じゃあ言う。さっきのは嘘だ」
「え!?」
わかりやすく、彼女の耳が垂れ、尻尾に元気が無くなる。そして、怒ったように顔をしかめながら言う。
「やっぱり、人間ってゴミ屑だね」
「ああ、俺も含めてな」
「謝りもしないの?」
「人間は謝れる。から、謝ったろう? すまんって」
「もう一度謝りなさい。クソ人間」
「クソ人間です。すいませんでした」
彼女は僕が垂直のお辞儀を決めたのを見て、再び床をティッシュで拭き始めた。
「もう。許してあげるわ」
僕は彼女の顔を見て、小さな声で告げた。
「稲穂は今のまま、純粋でいてくれよ」
「ん? 何か言った?」
最初のコメントを投稿しよう!