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「いや、なんでもない。それより、永劫は存在しない。さっきの質問の意図はこうだ。人間は永劫を信じない。故に、稲穂も嘘をついたと見破ると思った上での言葉なんだよ」
「妖は永劫を信じている。なぜなら永劫を知る妖がいるからね」
「会ったことはあるのか?」
「話で聞いたことしかないよ。でも、永劫を知る妖は実在する」
「例えば?」
「妖怪の類は、生まれてから忘れられるまで生きる。忘れられなければ永劫の存在だよ」
「なるほど、でも本当に永劫とは言えないけどな」
「永劫でしょう? 自ら意図して終わらせられないならば」
「なるほど、たしかに永劫かもしれないな……」
「可哀想だと思った?」
「どちらかといえばつまらなさそうだと思ったかな」
「気が合うね」
彼女が床を拭き終えたティッシュをゴミ箱に捨てに向かった。僕は彼女の方を向いて言葉を放つ。
「さっきの話に戻るが、人間は皆、永劫を信じていないんだ」
「どうして? 永劫の存在を知らないから?」
「永劫が不可能であると考えているからだ。ある意味、存在を知らないと言うのも一つの原因かもしれないな」
「人間様の類稀なる偉大な知能を持ってすればら永劫なんて実現可能でしょうに」
「人間様は永劫なんて実現できないよ」
「時間をループさせれば永劫になるんじゃない?」
「たしかにそれなら生物学的制約は超えられるな。けど、自己に矛盾が生じるからダメだ」
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