数学ノ章

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「ああ、これはリンゴのなる木だ。けど、リンゴは一つもなってない」 「それならリンゴのなる木と言えないんじゃないの?」 「でも、毎年決まった時期に、この木にリンゴができるんだぞ」 「それなら確かに、リンゴのなる木とも言える? うーん。難しいねえ。ということは、この木にはリンゴがゼロ個だと言うことだよね?」 「さすが、野良狐とは違うな。その通り、この木にはリンゴはゼロ個なんだ。でもそれはゼロ個ではあるが、普通の動物がその木を見たって、リンゴのない木としか映らない」 「つまり、ゼロ個は強引に認識させてるってこと?」 「いいや、数学を得た人類の、仮想を使った大技なんだよ」 「やっぱり、難しいよ」 「そりゃあ、理解できるのなんて、本当に九尾の狐くらいのものじゃないか?」 「逆に、理解できれば九尾の狐になれるってことか」 「ま、普通の動物には無理だってことに間違いはない」 「なるほどー。数学って難しいんだね」 「あと、さっきのエックスも、ゼロと同じで、記号化されたものに過ぎないんだ。だから、この問題は仮想世界で行われている遊びにすぎない」 「この教室にいるみんなは、全く楽しそうに遊んでないけどね」 「俺も含めてな」 「そういえば、どうしてそこまでわかってて、数学が苦手なの?」     
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