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「だってそうだろ? お前が信じている確率でいえばこうだ。俺が勝つ確率は50パーセント、お前が勝つ確率も50パーセント」
「その50パーセントは同価値だとは思わないことね。こっちは科学の盾がある」
「ならば、こっちは迷信の矛があろう」
「ぐぬぬ、もし私が人間ならば、そんな矛をへし折ってやれたのに」
「残念だったな。稲穂、これはフィフティフィフティの戦いだ」
「うう。人間の部屋の掃除をする妖にだけはなりたくないよ」
「お、どうした? もう負ける算段を立て始めたか?」
「あー、あー、どのお揚げさんにしようかなあ!」
「ああ、自由に選ばせてやる。そのかわり、俺が勝ったら掃除してもらう場所はこっちが指定するからな」
「そ、そんな。まさか、リビングまで……」
「ちなみに賭けをしている最中は負けた時のことを考えないことを勧める」
「考えたくないけど、頭の中でぐるぐる回るんだよ」
「賭けの本質は賭けの内容にあるんだからな。勝ちと負けの確率は両方50パーセント、だとすれば、賭ける内容の方が大事なんだよ」
「ということは、私が掃除を賭けの条件で飲んでしまった時点で……」
「俺は最高千円程度の出費、お前は最高十時間程度の労働だ」
「ひどい!」
「いいじゃねえか。もしかすれば千円程度の高級お揚げさんにありつけるかもしれないぞ?」
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